陸上男子400メートルリレーで日本は北京五輪で銀メダルを獲得して以来、メダル常連国になっている。東京五輪では金メダルの期待がかかる。勝利のカギは、信頼関係とバトンパスだ。AERA 2021年7月26日号から。
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今季の世界の状況を見ると、米国が圧倒的に速い。
今季世界最高で、世界歴代7位の9秒77をマークしているトレイボン・ブロメルをはじめ、リレーは全員が今季9秒9を切った選手で組むことができる。このほか、今季9秒84の自己新をマークしたアカニ・シンビネを擁する南アフリカ、ロンドン五輪銀メダリストのヨハン・ブレークが軸となるジャマイカなど強敵は多い。
日本陸連の土江寛裕・五輪強化コーチも「アメリカが完璧なバトンパスをしてきたらなかなか勝てない」と話す。ただ、リレーにはバトンミスといったアクシデントはつきものだし、日本にはお家芸の「アンダーハンドパス」がある。
「オーバーハンドパス」に比べて、いまだ世界でも少数派の「アンダー」を日本が取り入れたのが01年のエドモントン世界選手権から。今年でちょうど20年になる。
「アンダー」の導入を決めた当時、日本陸連の短距離部長だった高野進・現東海大教授は「選手やコーチ陣から反対にあえば、そこまで押し通す気もなかったんだけど。意外にやってみようか、という声が多かった」と振り返る。「その後もいつやめてもいいって言ってきたんだけれど」
そんな言葉とは裏腹に当時のエース朝原宣治、末続慎吾らを軸としたメンバーに「アンダー」は浸透し、08年北京五輪のメダル獲得につながった。
■精度が浮上のカギ
「アンダー」と「オーバー」を改めておさらいすると、次走者が下に向けて出した手のひらに前走者がバトンを下から上へ渡すのが「アンダー」で、「オーバー」は次走者が後方に高く上げた手のひらに前走者が上から下へバトンを渡す。一般的に「アンダー」は確実性はあるが、走者が接近して渡すため距離を稼げないという短所がある。
日本のバトンパスは世界一、というデータがある。