覚醒剤などの違法薬物犯罪を取り締まる厚生労働省麻薬取締部、通称「麻取(マトリ)」。芸能人や有名人の検挙でメディアに取り上げられることも多く、名前はよく知られた存在だ。そのマトリで現在、職員の士気にかかわる“問題”が起きているという。薬物の取り締まりのプロに何が起きているのか。
最初に、マトリの組織の概要を説明しておこう。マトリは全国地方厚生局の一部門として、北海道から沖縄まで支局や分室も含めて12の部署に分かれており、違法薬物を取り締まっている。花形部署は関東信越局と「キンマ」と呼ばれる近畿厚生局だ。
なかでも東京にある関東信越局は、違法薬物を扱う警視庁組織犯罪対策五課(以下、組対五課)と同様に、著名人の検挙の際に出てくる。有名人や芸能人の逮捕が取り締まり当局の使命ではないが、芸能人などであれば、それがメディアに大きく取り上げられることによって、違法薬物の危険性などが取り上げられるので意義はある。
しかし、関係者によると、関東信越局に限れば現在、職員の士気は落ちているという。
ここ最近でいうと、有名芸能人の逮捕は組対五課が多く、マトリは一昨年の5月にアイドルグループKAT―TUN(カトゥーン)の元メンバーの男性を検挙して以降はない。そして、この逮捕後に、マトリはある“事件”を起こしている。
この元メンバーの裁判で、判決の日程がある理由によって変更されたのだ。その理由とは、マトリの職員が、元メンバーの自宅を捜索し、逮捕する場面の映像をテレビ制作会社の依頼に応じて流したことにより、捜査の適法性や疑義を生じさせて公判延期を招いたのだ。
元メンバー側の弁護人は「重大なプライバシー侵害」として、マトリの幹部2人を国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで東京地検に告発。不起訴処分となったが、厚労省内では昨年2月に処分が出ていた。次長を1カ月減給10分の1、上司である部長を訓告、部下の課長2人に対しては注意・指導処分としている。