「兄さん、すいません。うち、お米が切れてました」。先輩が出ないのをいいことに、子どものような言い訳を留守電に吹き込む。すぐにメールで「了解です」と先輩。優しい方なので察してくれたのだろう。その後、「私はそんなものやらない」と公言したり、「受け取ってもらえない」と嘆いたりする有名人も多数出現。ブームは去っていった。
その頃のバトンの「化石」がいまだにSNS上に「雨ざらし」になっている。受け取りたくもないのに受け取って、回したくないのに回す。そんなバトンは一目ですぐにわかるものだ。ブームから1年経った今、その残骸を発掘するのはなかなかに楽しい。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中
※週刊朝日 2021年7月30日号