五輪の重量挙げで日本勢が獲得してきたメダルは、男子が12個、女子が2個で計14個(金2、銀3、銅9)だ。そのうち女子の2個は宏実が取った。金メダル2個も義信さんだ。
義信さんの弟で宏実の父の義行さんも68年メキシコ五輪で銅メダルを獲得し、金の義信さんとそろって表彰台に上った。「三宅家」で計6個で、日本勢合計の4割以上を占める。義信さんは目を細める。
「三宅家には五輪の神様がついているんだよ」
義信さん自身、ローマ五輪でジャークを2回連続で失敗し、後がない3回目で成功させた。その次の東京五輪では自国開催の重圧がかかる中、9回の試技をすべて成功させた(当時はスナッチ、ジャークのほかに「プレス」があった)。義行さんもメキシコ五輪でジャークを成功させながら反則を取られたが、時間内に再挑戦して銅メダル。
「時間内にもう一度成功させるなんて、普通ではできません」(義信さん)
宏実の試技にも「神の助け」を感じる場面があったという。それが16年リオデジャネイロ五輪だ。
■前回はバーベルにハグ
腰を痛め、痛み止めを打って臨んだ試合。いつもなら難なく挙げられる重さのスナッチを2回失敗した。宏実も試合後、「全然挙げられるような重さじゃなかった。もう私の夏は終わったと思いました」と振り返ったほどだ。
だが、3回目は成功した。「不思議な3本目だった。きっとみんなが手伝ってくれたのかな」(宏実)。スナッチを終えた時点で8位。ジャークで最後に大逆転して銅メダルを獲得した。試技を終えるとバーベルにいとおしそうにハグした。
義信さんはこう語る。
「三宅家はみんな不思議な力に助けられてきた。常日頃の練習を滞りなくやって神様がついてくるんでしょう。宏実が三宅家の伝統をつないでくれたね」
一方、宏実は伯父が金メダリストとなった東京で57年ぶりに開催される五輪に自分が出場することに、「きっと縁があるのかな」と感じてきたという。
「父や伯父、兄の存在があったからこそ、負けないように頑張ってこられた。超えたい、追いつきたい気持ちがあって、ここまで来られた」
24日はほかに柔道女子48キロ級で渡名喜風南(25)が銀メダルを獲得。同男子60キロ級ではリオ五輪銅メダルの高藤直寿(28)が今大会の日本勢金メダル第1号となった。テコンドー女子49キロ級で山田美諭(27)は5位だった。(編集部・深澤友紀)
※AERA 2021年8月2日号