この人たちの勝手に付き合わされ、コロナにかかって大変な目にあったらどうしてくれるんだ。まして自分や大事な人が死んだりしたら。
その俳優はこうもつづけた。
「バッハさんのことも、言い間違いも含めて、金メダルの話題が二つか三つ重なれば、みんな忘れます」
強烈な嫌み? 強権政治の提灯(ちょうちん)持ち? 戦後、あたしたちがこんなに自分たちの命を軽視されたことがあったか? みんな、このことは、絶対に忘れないでいよう。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2021年8月6日号