連日千人を超える新型コロナウイルス感染者が出て、4回目の緊急事態宣言が発出されている東京で7月23日、第32回オリンピック競技大会東京大会(東京五輪)が始まった。約6千人の選手団が参加した開会式で、天皇陛下は「祝い」の表現を使わずに、開会宣言をした。
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新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期になった東京五輪が23日、幕を開けた。無観客で実施された国立競技場での開会式で、聖火の最終点火者に選ばれたのは、女子テニスの大坂なおみ。プロ野球の巨人・長嶋茂雄終身名誉監督やソフトバンク・王貞治球団会長、パラリンピックの金メダリストの土田和歌子さんらからつないだ火を、聖火台にともした。
なぜ、大坂が選ばれたのか。東京五輪の開閉会式でエグゼクティブプロデューサーを務める日置貴之氏は、開会式後の記者会見でこう説明した。
「日本を代表するアスリート。いろいろなメッセージを出していて、最もふさわしい」
大坂が人種差別問題について積極的に発言する姿勢が、大会が打ち出す「多様性と調和」のメッセージと合致したと思われる。
一方、大会前からの課題は残ったままだ。スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は言う。
「開会式ではいろんなパフォーマンスが披露されましたが、中継したNHKの解説を聞かないと理解できない内容でした。選手たちがコロナ禍で直面した苦難は、簡単に表現できるものではありません。そもそも、現在の状況で開催することについて強いメッセージを発する必要がありましたが、伝わってくるものが何もありませんでした」
大会開催の意義については、多くの国民が疑問に感じている。
朝日新聞の最新の世論調査によると、五輪の開催に賛成は33%である一方、反対は55%にのぼった。まさに、国論を二分した大会となっている。
開会式の最中も、会場の周辺では五輪反対デモが繰り広げられていた。式典ではコロナで犠牲になった人への黙祷(もくとう)が捧げられたが、その間も「オリンピックやめろ!」「オリンピックの費用を医療に回せ!」というシュプレヒコールが会場の中にまで聞こえてきた。