有村:観ていただける方に一番近い存在は、たぶん世津だと思います。私も自分なりに過去のインタビューなどを調べていたのですが、ある女性兵士の話が印象に残りました。毎日、爆弾が落ちて、誰かが死んでいくけれど、美しい空、美しい朝は変わらぬままだったという話で、それが残酷で、同時に救いにもつながる気がしました。
柳楽:撮影は2019年9月、10月で、コロナ禍前でしたが、映画の内容はいまのコロナの状況にも通じますよね。何が本当かわからず、人々が世の中のムードにのみ込まれていく。この時代の修もそうです。それでもみんな毎日本気で、必死に前を向いていた。それが、この作品のよさで、時代が違っていても、共感していただけるところではないかな、と思います。
■よくご飯に行った
――映画では男性たちが戦争の狂気にとらわれる一方、女性は感情を押し殺し、冷静に現実を見据えている。
有村:日々、状況が荒れていく中で、生き抜くと決意しても、次の日はもうだめだと絶望する。世津はそういう葛藤をずっとのみ込みながら、未来を見つめて負けないでいる。ただ、3人で行った想い出の海で、抱えていた感情が爆発してしまうシーンがあるんです。
柳楽:あのシーンは夜明けの海で1回しか撮れない場面だったから、舞台みたいに緊張しました。実際、想定よりも天候が荒れて、演技どころじゃなかったんです。カットがかかった後はバタンと倒れて、しばらく動けなかった。その分、迫真のシーンになりましたけど。
――撮影中、お互いの芝居について話しあうことは少なかった。
有村:私たちは、お芝居のやり取りについては、あまり話さなかったんです。その代わり、よくご飯を食べに行きました。
柳楽:京都ロケで食べた焼き肉、おいしかったね。あと、のれんをくいっと開けて入っていく“ザ・京都”みたいな割烹屋さんとか。僕は架純ちゃんといると、ちょっと居心地がよくて。春馬くんとは10代からオーディションで競い合ってきた仲だし、架純ちゃんとも共演があったし。