最近はご家族のことをオープンに書いたご本、『ダーリンの進化論』が話題のヴァイオリニスト・高嶋ちさ子さん。作家・林真理子さんとは、実は30年来のお知り合いだとか。思い出話にも花が咲く対談になりました。
* * *
林:私、高嶋家の皆さんを昔から存じ上げていたので、ちさ子さんがご家族についてお書きになった『ダーリンの進化論 わが家の仁義ある戦い』を読ませていただいて、なつかしく思いました。
高嶋:うれしい! もう忘れていらっしゃるかなと思ってました。
林:ちさ子さんのお兄ちゃんが、私の夫の会社の後輩で「妹がマイアミでオーケストラやってて、今度戻ってくるんです」と紹介してくれました。だからちさ子さんのことは30年くらい前から知っていますよね。あのころ、けっこうお会いしていましたね。
高嶋:そうですね。
林:「こんなにおしゃべりがおもしろいんだから、そっちの世界に行ったら?」って、私が言ったの覚えてる(笑)。
高嶋:実は、真理子さんにお会いしたころって、たぶん人生でいちばんどん底で、暗黒期だったんですよ。結婚したいのに、どんなに合コンやっても相手が見つからない。仕事もうまくいかなくて、すごく弱気じゃなかったですか?
林:まったくそんなふうには見えませんでした。「モテモテだろうな」ってみんな思ってたと思う。
高嶋:ぜんぜんそんなことありませんよ。当時なんか親に生活費を借金してて。結婚するときに「借金帳」というのを渡されて、見たら、青学(青山学院)の初等部の学費から何から、全部領収書が貼ってあるんです(笑)。おそろしい。でも、全部返しました。
林:素晴らしいやり方です。子どもにはお金かかりますもんね。
高嶋:母は大変だったと思いますよ。うちはきょうだい3人いたから。
林:しかも、いちばんお金がかかる音楽をやっていらして。
高嶋:留学までしちゃったし、ダウン症の姉もいるし。
林:みっちゃんですね。ご本にたくさん登場されてました。
高嶋:彼女、器用なんですよ。今は父と二人で住んでいるんですが、食事の用意、ゴミ出し、洗濯、何でも姉がやるんです。あと、すごく口が立つんです。
林:それは……。
高嶋:血筋ですよね。