「これらによって神経細胞のエネルギー代謝が促進され、アミロイドβが除去されると考えられています。睡眠が深くなると、脳脊髄液が脳内に流れ込み、蓄積した老廃物を洗い流すというボストン大学の最近の研究も注目されています」
徹夜はアミロイドβが増加するというから厳禁だ。「認知症の危険因子」=右下の表=にある「難聴」も詳細は解明されていないが、関係が深いという。
今回、アエラでアンケートを取ったところ、ほとんどの人が食事と運動に気を配っていた。運動はウォーキング、水泳、ヨガ、マラソン、トライアスロンなど。ストレスはためず、無理をしないという回答も目立った。
■健康を過信しない
50歳からは健康診断もこまめに受けたい。50歳の女性は昨年、がんを患った恩師の勧めで数年ぶりに検診に行ったところ、乳がんが見つかった。
「あと1、2年早く検診を受けていたら、リンパ節への転移が少なくて済んだかもしれません。健康を過信しないほうがいい」
社会的なつながりと健康の関係を指摘するのが、高齢者心理を専門とする神戸大学大学院の増本康平准教授だ。
「最近では人とのつながりが身体的にも精神的にも健康状態に大きく影響することがわかっています。社会的孤立は認知症のリスク要因であるだけでなく、喫煙やアルコールより死亡率に影響するとも言われています」
家族や友人とつながっていれば情報が得られ、相談して不安を解消し、サポートを受けることもできて健康寿命が延びる。ただ、人間関係を築くには時間がかかる。50代から地域、趣味などのつながりを作っておいたほうがいいと増本さんは言う。コミュニケーションがとれるように、デジタルデバイスも使えるようにしたい。
「人生の最後の幸福感を考えたとき、悔いを残さないことも大事です。後悔には、やってしまった後悔と、やらなかった後悔の2種類があり、引きずるのは、やらなかった後悔です」
増本さんは3年前、思い切って何のツテもない米・スタンフォード大学の客員研究員になった。後悔の種を一つ減らしたが、海外生活で社会的孤立の心身へのダメージも痛感したという。
「もう一つ大切なのは50代のうちによい生活習慣を身につけること。認知機能が低下しても習慣は残ることが多く、元の生活が維持しやすくなります」
食事、睡眠、運動に加えて人間関係や生活習慣まで、今からできることはまだまだある。(ライター・仲宇佐ゆり)
※AERA 2021年8月2日号より抜粋