寿命が延び、50歳は人生の折り返し。その後の人生を充実させるには、何といっても健康でなければならない。気をつけるポイントとは。AERA 2021年8月2日号から。
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100歳になっても認知症にならず、自分の足でしっかり歩ける。この目標を達成するためには50歳からのリスク管理が大事、とお茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二院長は話す。
「人生の後半戦50年のクオリティーを決めるのは、認知症、骨粗しょう症、がんのリスクです。この三つを管理するには、現時点で自分が抱えている要因を知り、リスクの大きいものから除去していけばいいのです」
まずは生活習慣の中で、肥満、睡眠不足、酒の飲みすぎ、喫煙などを改善し、歯周病を治療して危険因子を減らす。
白澤さんによると、食事に関しては、オリーブオイル、野菜、魚、赤ワインを中心とした地中海料理が健康長寿のグローバルスタンダードだ。日本食も、対抗できる論文はまだないものの、地中海料理より優れている可能性があるという。また、食物繊維を多く摂取する人は、少ない人に比べて健康的な生活を長く送れる確率が80%も高い。飲酒は週4日以下なら、ほとんど飲まない人と脳の加齢の進行に差は見られないそうだ。
睡眠の質も重要だ。就寝の1~2時間前に入浴すると、温まった手足からの放熱が体の深部の温度を急速に下げ、質のよい睡眠が誘導される。夕食と就寝の間の時間が長いと、乳がん、前立腺がんの発症リスクが減少するという報告もある。
■毎日12時間以上の絶食
物忘れの症状が出て認知症の外来を訪れるのは75歳以上が多い。しかし、50歳の脳をMRIで検査すると、すでにほとんどの人に病変が見られるという。
「25年間は症状が出ていないだけで、脳の病気は始まっています。最近の論文では45~55歳が認知症のスタート。50歳は予防を始めるにはいい時期です」
認知症の7割弱を占めるアルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することで起きる。カリフォルニア大学のデール・ブレデセン博士は、糖質を減らす、野菜中心の食事、毎日12時間以上の絶食、夕食と就寝時間を3時間以上あける、8時間睡眠を勧めている。