■医療政策は科学的判断

 また、かなり進行した状態でがんが見つかる患者さんも増えてきています。昨年来、検診を受けるのを控えていた人が少なくないからです。こういった方たちも、早く治療をしなければ手遅れになります。

 糖尿病や高血圧といった生活習慣病などはふだんからきちんとコントロールしておかないと、新型コロナウイルスに感染した時に重症化しやすくなります。

 医療政策は目先のことだけをみてとるのではなく、幅広く総合的に目配りし、科学的に判断した上で決めるべきです。

――内閣府によると65歳以上の高齢者のワクチン接種率は30日現在、2回終了が73.1%、1回接種は85.7%に達した。

 若者も含めた接種対象者全体でみれば2回終了した人は3割、1回も4割程度にすぎません。

 国民が広くワクチン接種を終えたのでかなり安心できる、という話ができるのは早くても10月か11月でしょう。今はそんな話ができる状況ではありません。それなのに、高齢者のワクチン接種が進んだから第3波とは違う、といった誤ったメッセージを政治家らは出している。

 今は安心できるどころか、全国に感染の嵐が吹き荒れるのを防げるかどうかの瀬戸際です。

(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年8月9日号より抜粋

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