「体を動かすと血流がよくなります。そうすると血流で血管の内壁が刺激され、一酸化窒素(NO)という物質が放出されます。この一酸化窒素は血管が硬くなるのを予防し、しなやかにしてくれます」

 有酸素運動であれば何でもよく、できればウォーキングやジョギングなども取り入れたいが、暑い夏の最中、屋外で体を動かすのは熱中症の危険を伴う。また、コロナ禍の自粛による運動不足の状態から急に体を動かせば、足腰を痛めたり、ケガをしたりする危険も。その点、ストレッチならクーラーの利いた涼しい部屋でできる。安全に、快適に、動脈硬化を予防できるわけだ。

 紹介する血管ストレッチは全部で5種類(記事最後を参照)。ストレッチを効かせたい血管は、体の中心を走る大動脈、足の付け根にある大腿動脈、膝裏を流れる膝窩(しっか)動脈、ふくらはぎから足首を流れる後脛骨(けいこつ)動脈、そして足先を流れる毛細血管だ。

 なぜこの五つなのか。

「血管は全身に張り巡らされています。下肢の大きな血管や毛細血管を意識的に伸ばして血流をよくすることで、末梢の血流を高めることができます」(家光さん)

 血管ストレッチが今までのストレッチと違う点は、「伸ばす血管の場所を意識しながら伸ばすこと」。もう一つは、「ストレッチとストレッチの間を10~20秒開け、休息時間をとること」だ。血流がよくなるのは、ストレッチを終えて血管が緩んだ後。血流をしっかり全身に巡らせるためにも、インターバルをしっかり設けよう。

 その他の注意点は下に示した。しっかり守って効果を上げるストレッチを行っていこう。

【血管ストレッチを行う際の注意点】(家光さんへの取材から)
・必ず大きく呼吸しながら行う(呼吸を止めない)
・血管を意識しながらストレッチを行う
・次のストレッチまでの間は10~20秒開ける
・「イタ気持ちいい」と感じるところまで伸ばす
・関節などの痛みがある場合は無理をしない
・できるだけストレッチの順番は守る

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