■相続税を節税できる

 このうち、節税効果を期待できるのは「任意組合型」だ。その仕組みを解説しよう。

 そもそも不動産は、すぐに現金に換えられないことから、相続税の負担が軽減されている。相続税の評価額は現預金だと額面がそのまま反映されるが、不動産は実勢価格(時価)よりかなり割り引かれる。土地の場合だと「路線価」をもとに評価額が決まるが、路線価は時価の8割程度が一般的だ。建物は建築費の6割程度に相当する「固定資産税評価額」で評価される。

 しかも、他人に貸し出している不動産は容易に立ち退きを要求できないことから、さらに評価額が割り引かれる。自分で住んでいるケースに比べ、土地は8割程度、建物は7割程度の評価となる。こうして評価額が下がれば、実勢では同じ資産価値の預貯金と比べて、相続税負担が大幅に抑えられるわけだ。任意組合型だと投資家が不動産の共有持ち分を所有しているので、こうした税制上のメリットを享受できる。

 もともと資産家の間では、相続税の節税対策という観点から賃貸不動産に投資する動きが活発だった。ただし、相続人の数に応じて物件を所有しておかないと、公平に遺産を分割しづらい。いわゆる“争続”を招くケースも珍しくなかった。

 その点、任意組合型の不動産小口化商品なら、100万円程度から投資できる。公平に分けられる数だけ買いそろえておけばいい。一部の富裕層がこの商品に目をつけているのも、節税とともに“争続”の回避を期待してのことのようだ。

 もっとも、ファイナンシャルプランナー(FP)の深野康彦・ファイナンシャルリサーチ代表は、こう指摘する。

「実物の不動産と比べれば、平等に分け合うのが容易であることは事実でしょう。とはいえ、こうした新手の商品に節税目的で飛びつく人が殺到すると、税務当局ににらまれて封じ込められるというのが今までの経験則です。相続(被相続人の死去)がいつ発生するのかは誰にも予知できませんし、その場面が訪れた際には税制が改正されている可能性も考えられます」

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