戦術面で攻撃の引き出しが少ないことがやり玉に挙がり、本来のパフォーマンスに程遠い長友佑都、大迫勇也をスタメンで起用し続けた采配にも疑問の声が。森保監督はJ1・広島で約6年間監督を務め、3度リーグ優勝に導いている。17年の最終年は2勝11敗4分で降格圏の17位と低迷してシーズン中に辞任したが、日本代表の監督で受けた批判の声や重圧は想像を超えたものだろう。
森保監督の現役時代から取材してきたテレビ関係者は、逆境での姿勢に驚いたという。
「代表監督の解任を求める声が高まっていた時でも、堂々とした姿勢を崩さず、選手やスタッフとのコミュニケーションを密に取っていた。『責任はオレが取るから、思いっきりやってくれ』と声をかけている姿を見ました。W杯予選で崖っぷちに追い込まれてもチームが空中分解しなかったのは、森保監督と選手たちが強い信頼関係で結ばれていたから。外部の批判が高まったことで結束力が強固になったように感じました。ドイツ戦の大金星で称賛の声に変わっても、浮足立つことはない。W杯ベスト8という目標に向け、本当の戦いはこれからです」
3戦目で激突する優勝候補のスペイン、決勝トーナメントに進出以降も格上の強豪国と当たる可能性が高い。個々の技術では劣るかもしれないが、史上最強と形容される日本代表の強みは組織力と選手層の厚さだ。後半に5枚の交代カードがズバリ的中したドイツ戦は象徴的な試合だった。
1993年10月28日。勝てば本戦初出場が決まるアメリカW杯最終予選の最終節・イラク戦で後半のロスタイムに同点に追いつかれて夢が破れた。「ドーハの悲劇」でグラウンドに崩れ落ちる選手たちの中に、ボランチでチームを献身的に支えた森保監督の姿があった。因縁の地に立つ指揮官は、日本サッカー史の新たな扉を開けるか。(ライター・今川秀悟)
※週刊朝日 2022年12月9日号