「オーストラリア戦での新しいフォーメーションはぶっつけ本番に近かったが、結果を残したことで大きな自信になった。ドイツ戦で急な戦術変更に対応できたのは、サッカーIQが高い選手がそろっていることに加え、森保監督の意図をくみ取って迷いなくプレーする下地をこの4年間で築いたからだと思います」(前出の記者)
森保監督が描いたシナリオに選手たちが満点回答で示したのが、ドイツ戦だった。後半に日本のアタッカーたちが圧力をかけると、ドイツの運動量が落ちて出足が鈍くなる。後半30分。左サイドの三笘のスルーパスに反応した南野が折り返す。GKノイアーにはじかれたボールを堂安が左足で蹴り込んで同点に追いつく。カタールのドーハ・ハリファ国際競技場の雰囲気が一気に変わった。勇猛果敢な日本の戦いぶりが国境を超え、観客を味方につけた。歓喜の瞬間は後半38分。FKから板倉滉がロングパスを送ると、浅野がDFを振り切り逆転ゴールが生まれた。
森保監督が日本代表監督に就任以降、このW杯までの通算成績は58試合で39勝11敗8分、勝率6割7分2厘。歴代の代表監督の中でトップの勝率だが、森保監督に対する評価は芳しくなかった。親善試合ではなく、公式戦の大事な試合を落としていることが印象を悪くしていた。
19年2月のアジア杯決勝・カタール戦に1-3で敗れる。前半に2点を先制されて攻撃陣が停滞しているにもかかわらず、最初に交代のカードを切ったのは後半17分。その後も試合の流れを引き寄せる采配は見られなかった。五輪代表監督を兼務したが、昨年夏の東京五輪ではグループステージで3連勝と勢いに乗る戦いぶりを見せた後、準決勝でスペインに0-1で敗れると、3位決定戦のメキシコ戦も1-3で敗れて銅メダル獲得ならず。元日本代表の田中マルクス闘莉王は自身のYouTubeチャンネルで、「え!?という交代の仕方が多い」と森保采配に疑問を呈した上で、メキシコ戦で全失点に絡んだボランチ・遠藤の起用法に言及。「遠藤のパフォーマンスを見ていたら、いくらオーバーエージ(枠)でも代えるべきだった」と指摘した。