そしてそのことが可能だったのは、ドラマというコンテンツが「時間の経過に耐えうるコンテンツ」だったということだ。

 私はかつて単行本の編集者だったが、単行本でも、出した当初の売れ行きはぱっとしていなくとも、ネットで火がついて半年後に売れだすということがあった。

 このことの意味を、新聞に携わるひとたちはよく考えたほうがいい。地上波からネットへ人々が活動の場をうつしているように、紙からネットへ人々は情報摂取の場をうつしている。そこでお金をとっても人々が読むコンテンツというのは、時間の経過に耐えうるそこにしかないコンテンツなのだ。

 官庁や警察に貼りついてとってくる情報は、出したとたんに、ネットで共有されその価値は瞬時にゼロになる。そうではない情報、そこでしか読めない企画を人々はお金を払って読む。

 テレビ局にとっての課題は、ネットの広告料はたかが知れているということだ。そうなるとネットの有料サービスにいかに視聴者を囲い込むかという話になってくる。ネットフリックスやアマゾンプライムなどの有料サービスと例えばFODがいかに競争して勝てるか、というフェーズに局面は変わってきている。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。



週刊朝日  2022年12月9日号

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