チューナレスTVには、地上波は映らない。だから、Amazon Prime やNETFLIXのボタンはあるが、地上波用のチャンネルボタンはない。
チューナレスTVには、地上波は映らない。だから、Amazon Prime やNETFLIXのボタンはあるが、地上波用のチャンネルボタンはない。

 私も、学生たちがそんなに熱狂しているならと、配信されていた第1話から第7話まで見てみた。ただし、第4話はすでに消えていたし、TVer上のコマーシャルがすこしうざいので、フジテレビがやっている有料デジタルサービスのFODの会員になって。

 FODの会員料は、月額976円(税込み)。第4話のFODの再生回数は100万は超えていると見られるから、この『silent』見たさで私のように有料デジタルの会員になった人は多いはずだ。

 高校の同級生で卒業後消息をたった元カレの佐倉想(目黒蓮)を、青羽紬(川口春奈)が、駅で偶然見かけるところからドラマは始まる。少し離れた距離から何度か大声で呼びかけるが、佐倉は振り返らない。卒業式のあと、突然「好きな人がいる。別れたい」とラインが来て、電話にもでなくなった佐倉。8年がたっていた。

 見かけた駅で、同じ時間に待っていると、佐倉が今度は駅を降りてきた。道を歩く佐倉に何度も呼びかけるが、振り返らない。

「無視しないで」

 体に触って呼び止めた紬は、佐倉にしきりに話しかける。が、呆然とした表情の佐倉は、手話で、こう言うのだ。

「声で話しかけないで」

 この第1話の最後で、視聴者は佐倉が、若年性の聴覚障害で、卒業式後の8年で聴力をまったく失ってしまったことを知る。ここで視聴者はドラマのタイトルの意味が初めてわかるのだ。このアーカイブされた第1話の衝撃で続きを見た視聴者は多いだろう。

 続く7話まで、聴者とろう者そして中途失聴者の世界の違い、その中でのコミュニケーションをきめ細かに描いていて素晴らしい。silentは文字を入れ換えればlistenになる。

 この『silent』の成功は、テレビの地殻変動を表す象徴的な出来事だ。かつて地上波の視聴率は1パーセントあれば100万人が見ているとされた。ということは、すでに、『silent』は、地上波の視聴率が6パーセント台であっても、それに匹敵する人々がネット上で番組を見ているヒットドラマということになる。

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