最終日に登場した弟・拓斗(65kg級)は、過去に敗れた2選手にリベンジして決勝に進出。決勝は終了間際まで厳しい状況だったが、残り15秒の必死の攻撃でポイントを挙げると、相手のチャレンジ失敗で加点された1点を守り切り5-4で劇的な優勝。「苦しいことが多くて、でも周りの人のおかげで前に進めた。兄が負けてしまい二人で金メダルは叶わなかったけど、全力を出して兄の借りを返したいと思って頑張りました。みんなが一致団結して自分を勝たせようとしてくれてすごくうれしいです」と兄弟やチームの結束に感謝の涙を流した。「兄弟で金メダル」はパリ五輪の夢として期待したい。
女子は前回リオ五輪に並ぶ最多タイ4個の金メダルで力を示した。共に3位決定戦を戦った76kg級の皆川博恵(クリナップ)と68kg級の土性沙羅(東新住建)は、惜しくもメダルまで届かなかったが、中軽量級の4選手はいずれも見事な戦いで世界の頂上にたどり着いた。
57kg級の川井梨紗子、63kg級の川井友香子姉妹(共にサントリーグループ・ジャパンビバレッジ)は、昔から憧れ続けた「姉妹で金メダル」の夢を見事に叶えてみせた。夏季五輪の同じ大会での姉妹金メダルは日本初の快挙である。初出場ながら終始堂々としたレスリングで優勝を飾った妹・友香子の勢いそのままに、姉の梨沙子も女王として盤石の試合運びで2連覇を果たした。リオ五輪後も階級を下げながら常に世界王者の座を維持し続け、国内では伊調馨に引導を渡す形で厳しい代表争いに勝利して今大会に出場した。準決勝では、吉田沙保里の4連覇を阻止したヘレン・マルーリス(アメリカ)を退ける。リーダーとして女子代表チームを引っ張り、“レジェンド超え”も果たした先にあったのは、見事な五輪2連覇だった。梨紗子自身は「(吉田と伊調は)偉大過ぎる。どこまで追いかけても届かない2人」と尊敬するが、まだ26歳の梨紗子が今後の五輪2大会を制して伊調の4連覇に並ぶ可能性も十分にあるだろう。
川井友香子と同学年の53kg級の向田真優も、初出場の五輪で素晴らしい試合を見せた。決勝では0-4のビハインドから終盤の猛追で5-4の逆転勝利。エリートアカデミー出身者として初めての金メダルだった。