パルスオキシメーターにべったりついた指紋をふきとる余裕も、療養者にふさわしい食事を送る余裕もない現実のなか、選手村の食堂の食事がおいしいとか、おもてなしが素晴らしいというニュースが流れてくるおかしさに、もういっそ何も考えずに感動してやろうか!? というやけを起こしたくなる。やけを起こして感動、だなんて、2021年の東京以外ではなかなか味わえない体験かもしれない。

 安心して病気になれない。安全な食事を得られない。それはもう、国が機能していない証拠だろう。決定的な間違いを犯した2021年の夏、東京五輪が過ちとして歴史に記憶されていくのは、遠い未来のことではないはずだ。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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