毎年夏は熱中症患者の対応に医療機関は追われる※写真はイメージです(Getty Images)
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■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、東京五輪開催された一方で、新型コロナウイルスの感染が急拡大している東京について。

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「東京の夏は熱中症患者で、毎年、医療体制は軽く崩壊するんです」

以前、知人の医師がそう言っていたが、今年の熱中症患者は医療にアクセスできているのだろうか。

 先日、冷房はつけていたものの日差しの強い車内で数十分過ごした後、体の熱が取れず、次第に吐き気とだるさに体がギシギシと苦しみだした。

 20年も前のことだが炎天下を歩いた数時間後、高熱と頭痛のなか意識を失ったことがある。その体験があったので急いでポカリスエットを大量に飲み、氷を頭にあて、横になったが、頭痛はより激しく、熱は上がり続けた。

 意識を失った時の恐怖がよみがえってきた。スマホで「熱中症」「頭痛」と検索すると、頭痛を感じたらすぐに病院に行けと書いてある。点滴を打ちさえすれば楽になるのは分かっているが、今、病院で診てもらえるのか。悶々としながらも恐怖が勝り、近所の病院に電話をしたのは夜の10時だった。持病でかかっている病院で、友人や家族が救急でお世話になったこともある。

 が、やはり結果は案の定。熱中症の症状を伝えると「6カ月以内にこちらで診療を受けていますか? そうでなければ紹介状が必要」と言われた。「6カ月以内はないが1年以内にはある。私のカルテはある。この時間から紹介状は無理。というか今、とても苦しい」と一応言ってはみたが、「コロナのこの状況では、どうしても無理なんです」と丁寧に、だけれどピシャリと断られた。ですよね、それどころじゃないですよね、そりゃそうですよね……と私もすぐに静かに電話を切った。分かっていたことだ。

 2件目に連絡する気力はなかった。救急車を呼んでもきっと同じことだろう。だいたい私はまだ歩けるし、水も自力で飲める、大丈夫と目をつむった。きっと今もこういう状況の人が、全国に何万人もいる。コロナの息苦しさに恐怖を感じている人、熱中症の頭痛に悶えている人、どんどん上がる熱に怯える人。苦しさと恐怖の中、どれだけの人がじっと耐えているのだろう。

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「感動をありがとう!」に心乱され…