沖縄県の旅行先で出会いサイトにアクセスした記録が携帯電話に残っていた。そのお金はどこから、捻出したのか?母親は法廷でこう証言した。

「お金はアルバイトに障害者年金もあったので、そこからだしたのではないか」

 そして沖縄県の旅行を止めなかった理由を説明した。

「旅行をして大丈夫かと聞いたが、『チケットも取ったから』と息子は言いました。病気が回復し、動き始めたんだなと思い込んでいた」

 母親はそう信じた理由として、犯行前日に千里山に住んでいた時代の友人に電話していたことを上げた。

「友人と電話している声を久しぶりに聞いた。テンションも高かった。統合失調症になる前も電話することはなかった」

 母親が飯森被告の大阪行きをとめることはなかった。その後、警察官を襲撃し、拳銃を強奪するという前代未聞の犯行をしでかした。飯森被告が拳銃を奪って逃走。第2、第3の犯行も予測される中で大阪府警は大阪府全域にほとんど前例がない「特別配備」を発令し警備にあたった。

 飯森被告は法廷で自身の体調をこう語った。

「今の病状が7とか8くらいとすれば、犯行時は30くらいでひどかった」

 飯森被告の証言は詳しく述べることもあれば、都合が悪そうな質問には
「覚えていない」と繰り返す。裁判員の目にも疑問に映ったようで、「妄想で怖い、悪霊と言っている精霊さんになぜ、さんをつけるのか」と突っ込まれた。すると、飯森被告は饒舌に「大阪では、えべっさん、大福さんと神様に親しみを込めて、さんづけする。そういう感覚。精霊さんは絶対的なものであがらえない」と反論した。

 そのような裁判経過と、2人の専門家の精神鑑定などから大阪地裁は「限定的な責任能力があった」と実刑判決を下した。判決は限定的責任能力を認めた理由に「計画性」「合理性」をあげた。

 飯森被告は犯行直前、近くを走る阪急電車の駅の時刻表を調べて走って交番に向かっていた。スマートフォンで「千里山 一人 交番」と検索。

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「精霊さんの指示」に疑問視