
「新しい神宮球場の近くのイチョウ1列は衰退し、なくなってしまうでしょう」(石川教授)
共同で調査をした樹木学者、東京農業大学の濱野周泰(ちかやす)客員教授はこう心配する。
「イチョウ並木は植えられて100年以上たちますが、通常イチョウは数百年も生きます。何らかのストレスを受けていると考えられます。『著しく枯損』の1本は美しい姿に戻るかわかりませんが、戻るとしても100年単位の時間がかかります」
都の環境影響評価審議会では委員から「構造物をつくったり、工事をしたりすると影響が表れるのでは」などの懸念が示されていた。都環境局アセスメント担当課の担当者はこう述べた。
「事業者は再開発するのであれば、木の状況をより正確に把握し、工事の設計や施行の計画に反映させていくことが必要」
■「枯損と言い切れない」
事業者の三井不動産はこうコメントした。
「イチョウの所有者の明治神宮によると、イチョウ並木のうち数本は、他と比べて落葉時期が早いという異変を2019年11月から確認しているとのこと」
あくまで落葉の時期が早いとの見解だ。
「指摘のあったイチョウは22年も春先から先端まで新芽がでて葉が生育している状況を踏まえると、他のイチョウと比べ落葉が早い状態ではあるものの、現状枯損している状態とは言い切れないという樹木医の見解をもらっている」
「今回の計画により生育に支障がないよう詳細な根系調査を行う予定。支障がある場合は工法や施設計画等を含めて検討し、保全していく」
美しい姿を未来に残してほしい。
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2022年12月5日号