「変異株の分類については、WHOが決めている基準と、アメリカのCDC、ヨーロッパのECDCなど各国が定めている基準があり、自国にとって懸念すべきかどうかの基準は各国の判断になるのです。WHOの基準に基づけば、ラムダ株はVOIに位置付けられていますが、日本の場合、国立感染症研究所や厚労省はいまのところラムダ株をVOCやVOIと決めていません。自国の基準に基づき、公表しなかったわけです。もちろん、自国の基準でVOCやVOIに該当すれば発表したと思いましたけど、そこに分類されていなかったので、発表しなかったという論理だと思います」

 国内初確認となった女性が羽田に到着したのは、折しも五輪開催直前。米メディア「デーリービースト」は、国立感染症研究所の職員(匿名)から得た情報として、「五輪が終わってから公表するのが最善だというコンセンサスが厚生労働省にあった」と報じた(現地時間8月6日)。国立感染症研究所は国際機関のシステムには速やかに変異株の配列を登録するので、それを端緒に米メディアは報じたと思われる。
 
 こうした疑念に対し、厚労省は、「VOCに位置付けされていなかったため公表していなかっただけ」としている。隠ぺいの意図は「ない」とする。

「ラムダ株の他に、スパイクタンパクに変異が入ったウイルスは、7月時点で80件以上報告されています。それを逐一、国立感染症研究所が公表しているかというと、そうでもないのです。感染の伝播性などの知見がないものが多く、注視はしているようです」(先のウイルス研究者)

 一方で、厚労省の判断に対し、日本感染症学会の指導医でもある東京歯科大市川総合病院の寺嶋毅教授(呼吸器内科)は、速やかに公表して周知を図るべきだと指摘する。デルタ株が猛威をふるう現在、医療現場では、今後、ラムダ株でも同様のことが起きないか、懸念する声があるからだ。

「デルタ株のように変異株は、国内の感染者数に影響します。第4波で中心になったアルファ株を含めた過去の経験上、変異株は検出されてから、その後急激に広まっていきます。どうしても対策が後手後手にまわってしまう。警戒感を高めるためにも、検疫で検出された時点で公表されてもいいと思います」
 

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ラムダ株を警戒する理由