ラムダ株は、感染力が強く、重症化しやすいとされ、普及しているワクチンの効果が従来株よりも劣る可能性があるといった報告があるが、わかっていない部分も多い。そういう意味では、厚労省の今の国内の基準に従った判断は妥当なのだろうか。

「ラムダ株においては、まだ十分に解析されていないので、現時点の位置付けは難しいのは確かです。ラムダ株の割合が多いのは南米のペルーやチリです。すでに多くの国でも空港検疫レベルで検出されていますが、最近のイギリスでは8例ほど。疫学的な研究ができる国において、それほど数が出ていないとも言えます。対して、先に拡大したアルファ株の重症度や広がりやすさ、ワクチンの効果に関する論文は、イギリスやイスラエルからが多くエビデンスがしっかりしたデータもあります。しかし、ラムダ株も解明されてくると、VOCに格上げさせる可能性もあるかと思います。インド由来のデルタ株がそうでしたから」(寺嶋教授)

 ラムダ株に関しては現在、デルタ株のようにスクリーニング検査は行っていないため、市中感染しているかは不明だ。データを積み重ねるためにも、感染制御の観点からも、ラムダ株のスクリーニング検査を実施した方がいいという。

「市中感染が判明してから検査をしても、デルタ株のように、もう国内で蔓延している段階になっているような状況になりかねません。いまスクリーニング検査を積極的にしているのはデルタ株ですが、ラムダ株においても早く進めて、国内の現状を把握した方がいいと思います。広がってからの制御は厳しいです」(寺嶋教授)

 厚労省の、ラムダ株が国内の基準にあてはまらないので公表しなかったという説明は、理屈としては通っている。ただ、状況は刻々と変わるもの。この1年を振り返っても、感染拡大のスピードは予想を上回ることが多かった。

 いまだデルタ株による感染者数はピークアウトする兆しも見えない国内。この先、デルタ株の二の舞を踏むのだけは避けたい。

(AERA dot.編集部 岩下明日香)