IV度になると、排便時以外でも、ジョギング中や長時間立っていると脱出の度合いが強くなったりする。脱出した痔核が下着に擦れて痛みが起きる、下着が分泌液で汚れるなど、生活の質(QOL)が低下することも少なくない。
また、脱出した痔核が肛門括約筋で締め付けられて戻れなくなってうっ血し、腫れ、むくみ、出血などを起こして激痛を伴う、「嵌頓(かんとん)」という状態に陥ることもある。
■排便習慣の改善が治療には不可欠
痔核の治療には、保存療法(排便習慣の改善、薬物療法)と手術がある。
おなかクリニックおしりセンター部長の羽田丈紀医師は次のように話す。
「I度、II度ならば保存療法でじゅうぶん改善できるケースが多いのではないかと思います」
まず排便習慣を改善し(後述)、そのうえで薬物療法をおこなう。薬は消炎鎮痛作用、止血作用をもつ外用薬(軟膏・坐薬)と、内服薬(消炎鎮痛薬、整腸剤、緩下剤など)が用いられる。
保存療法で改善がみられない場合や、III度、IV度まで進んでいる場合には、手術が考慮される。現在、おもにおこなわれているのは、硬化療法(ALTA療法)と結紮切除術(LE)だ。
ALTA療法はジオン注射液という硬化剤を痔核に注射し、炎症を抑えて小さく固める治療法で、一般的に内痔核に適応される。LEは痔核の主血管を結紮(結ぶ)し、痔核を切除。内痔核や外痔核に幅広く適応される。合併症として、ALTA療法ではまれに出血や痛み、腫れ、発熱などが起こる。LEでは術後、出血が起こることがあり、痛みも比較的強い。
2018年にはALTA療法とLEの併用療法が保険適用となった。内痔核にALTA療法+外痔核にLEなど、症例に合わせた併用療法で、術後の合併症の軽減や、手術部位の早期回復が見込めるようになったという。
痔核の治療では「日帰り手術」をうたう医療機関も多い。とくにLEや併用療法では出血と痛みのコントロールが必要になる。医師とよく相談して、選択したい。