中島:しかし、野党の側もまだまだ課題は多く、政党支持率は伸び悩んでいます。野党は厳しく自公を批判していますが、具体的なビジョンが示せていないことが最大の要因です。一つのお手本にすべきは世田谷区長としての保坂さんの取り組み。中でも特筆すべきは、東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授とともに取り組んだ「世田谷モデル」と呼ばれる社会的検査です。PCR検査を拡充して、高齢者施設などでクラスターを防ぐための定期検査と、感染者が出た場合は濃厚接触者だけでなく、施設の職員と利用者全員を検査するようにした。そうして無症状の感染者を見つけ出し、クラスターを未然に防ぐ。検査数を一気に増やすために、「プール方式」といって多くの検体をまとめて検査する検査機も、国や東京都に先んじて導入しました。

保坂:症状がある人や感染の疑いがある人は、費用を国が負担する行政検査が受けられます。しかし、高齢者施設や医療機関の職員や入居者・入院患者を定期検査する社会的検査は当初、国から経費が支給されず、世田谷区が単独で負担する方法しかありませんでした。厚生労働省と粘り強く交渉した結果、昨年9月から全額が国費負担になりました。

中島:世田谷区の取り組みに国が追随し、保坂さんはその牽引役を担った。『NO!で政治は変えられない』という著書がある保坂さんは、「せたがやYES!」を掲げて、10年間にわたって区政の舵取りをしてきました。批判ばかりではなく、積極的に政策とメッセージを打ち出さないと人はついてきてくれないということを熟知し、力を発揮されたのだと思います。

保坂:その意味では、野党がいま、臨時国会の開催を求めているのは当然のこと。国会が6月半ばに終わって、長い夏休みに入ったまま一向に動きません。閉会中審査を開いても、立法や予算措置を講じることはできず、危機管理と言いながら漫然と従来のフレームから抜け出せない。ただ、野党は何をするために国会を開くのか、きちんと絵図にして見せないと国民はピンとこないかもしれません。

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