野球部ががんばっているときは、全校生徒は野球部のために応援し、野球部員は全校生徒のために全力を尽くす。それが今の智辯和歌山の勢いにつながっていくのだ。
■1日7限の授業を1年間で250日
授業時間は60分。まず、教科書レベルの基礎・基本を40分学び、残りの
20分は発展的思考力を養成する。要は、大学入学共通テスト対策を40分、残りの20分は二次試験の訓練ということだ。
多い時は1日7限目まであり、これが中学1年から高校3年までの6年間、続けられる。また、1年の授業数は250日を数える。ひと月のうち、第2土曜日だけが休みで、残りの土曜日には授業があり、年末も12月28日ぐらいまで授業が行われる。
勉強のスピードが速いと言われてはいるが、250日あるのでじっくりと教えることができるという。
医学部進学に強い高校は、中高一貫の男子校や女子校が多い印象があ
る。では、共学校の強みは、どこにあるのだろうか。
「男子校や女子校の良さも、あるでしょう。しかし、中学・高校生が男女一緒の場所で教育を受けるというのは、自然な流れだと思います。男性・女性のそれぞれの良さを、お互いに認めあって共有し、異性をいい意味で人間として意識する。そして自分にないものを学ぶ。これは、共学校でないとできないことです」
■感謝の心を常に大切にする教育方針
宗教学校でもある智辯学園和歌山では入学式のとき、新入生の一人ひとりに藤田理事長から「数珠」を渡されるという。
「わが校の宗教的情操教育の柱は、『感謝の心を常々大切にする』です。人のために尽くし、世の中で役に立てる人間になるという情操教育を6年間ずっとしていきます。人を助ける職業を考えたときに、最初に思い浮かぶのが医師。この宗教的情操教育も医学部進学率の高さに影響しているの
かもしれません」
教員も智辯和歌山で教えることにプライドを持ち、宗教的情操教育での人格形成も行う。知力と人間性を学び、両立させていくことで、将来、各分野で活躍するリーダーを育てているのだ。
コロナの影響や共通テストへの不安も、生徒たちにはあるだろう。
「不安は野球の試合と一緒で、どうなるかわからない。コロナのワクチンや治療薬の製造は、入試までに間に合わないかもしれない。それでも、入試は必ずあります」
休校中、授業の再開を待ち望んだ生徒たちは元気に登校し、夢中になって真面目に勉強していた。(長谷川拓美)