パスポートや銀行の通帳などは旧姓のみが通用することになりますが、親族の結婚式や葬儀、子供が通う学校のPTAなど日常生活では民法上の氏であるファミリーネームを使うことになります」
すでに旧姓併記できる公的証明はある。パスポートやマイナンバーカード、などだ。そうした場面を増やしていくこととは何が違うのだろうか。
「政府は旧姓の通称使用を拡大していこうとしていますが、通称はあくまで通称です。法律上の氏ではありません。また、何回も結婚、離婚を繰り返した人は、通称を2つも3つも持ってしまうことがあります。そうなると、戸籍でも辿れず、住民票にも現れない。本名でない通称がはびこる世界となり、法的には不安定な世界で、決して好ましいことではないと思うんですね」
そんな稲田氏には、弁護士の夫との間に長男、長女がいる。
「息子はもう結婚して稲田姓を名乗り別所帯で、孫もおります。娘は29歳でまだ独身なんです。娘が結婚するまでに、『婚前氏続称制度』を成立させておきたいと思いますね。いつ結婚するかもわからないし、結婚相手が見つかるかどうかもわからないんですけどね。いろんな選択肢がある方がいいと思います」
続いて、前国会で稲田氏がとりまとめ役になり提出した「LGBT理解増進法案」について。 最終的に国会では成立せず、自民党3役の預かりとなった。次の国会でもこの法案を提出するのだろうか。
「提出したいとは思っています。臨時国会になるのか通常国会になるのか、まだわかりませんが。ただ、ちょっと工夫がいるとは思います。前回の国会では、党内の反対意見が大きくて、その人たちを説得するのに時間が足りなくなりました。この法律は、いわゆる差別禁止法ではないんです。LGBTに対して、理解を増進しましょうという理念法なんです」
実際に、党内ではどんな反対意見が出たのだろうか。
「党内では、そんな法律を作ると、男性なのに女性だと偽って『女性風呂に入ってくる』とか『女性用のトイレに入って来る』とかね。法案の本質をねじ曲げられ、犯罪と結びつけられてしまうと、なかなか前へ進まないなと思いました。