「自分も作品に向き合うときに、より行間の気持ちを大事にしたいという思いが深まりました。セリフの裏にある思いや、すき間にある気持ちを感じ取り演じることが作品をより豊かにする気がします。それに表現者として大事なのは自分を解放すること。それがいまの私の課題です。演じるときにスッと力の抜けた状態だと、表現にやわらかさや余裕が出てくる。でもどうしても本番になると力みが出たり、がんばってよく見せよう、としたりする意識が働いてしまう。そこが抜けるような境地に持っていけたら、またいまの自分とは違った表現ができるかな、と思っています」
悟りの境地みたいですね、と思わず言うと、
「あはは! そうですね」
と、はじけるような笑顔を返してくれた。
(中村千晶)
沢口靖子(さわぐち・やすこ)/1965年、大阪府生まれ。84年、第1回「東宝シンデレラ」グランプリとなり、同年の映画「刑事物語3 潮騒の詩」でデビュー。85年にNHK連続テレビ小説「澪つくし」でヒロインを演じ、数々の映画やドラマに出演。99年から「科捜研の女」シリーズでヒロイン榊マリコを演じる。「科捜研の女 −劇場版−」は9月3日から公開予定。
※週刊朝日 2021年9月10日号より抜粋