エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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新学期は自殺リスクの高まる時期。自殺を思いとどまった人のメッセージを届けることも大切だ(c)朝日新聞社
新学期は自殺リスクの高まる時期。自殺を思いとどまった人のメッセージを届けることも大切だ(c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「ウェルテル効果」という言葉をご存じですか。メディアの報道の影響によって、自殺が増えることを言います。ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』を読んだ若者たちが、主人公と同じ方法で自ら命を絶った現象に由来しています。特に著名人の自殺では報道が過熱し、センセーショナルなニュースを繰り返し目にすることになります。

 昨年は、若者と女性の自殺が大幅に増えました。相次ぐ著名人の自殺報道の影響が指摘されています。コロナ禍の休校措置で家族と過ごす時間が増え、虐待など家庭での問題が深刻化したことや、不安定な雇用で働く女性たちが経済的な打撃を受けたことなどから、追い詰められた状況の人が報道の影響を受けたと見られています。

 1年が経ち、自死を選んだ著名人の命日前後には、再び報道が増える傾向にあります。「記念日反応」に注意が必要です。つらい出来事があった日の前後にそれを思い出し、精神的に不調になることがあるのです。

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