中でも9月はもともと、新学期の開始で子どもの自殺リスクが高まる時期です。それに加え、若者や女性のコロナ禍での不安の高まりや、著名人の命日が複数重なるため、今年も報道のウェルテル効果が気がかりです。

 それとは逆の「パパゲーノ効果」というのもあります。悩んでいる人が、自殺を思いとどまった人の話を知り、生きてみようという気持ちになる現象です。こうした報道を増やすことが大切ですね。

 私もメンタルの病気で、強い希死念慮を抱いたことがあります。今でも落ち込むとひょいと顔を出す「死にたいさん」と二人三脚の人生です。禅などの教えにある「今、ここにある命を生きる」とはどういうことか、年齢とともに少しずつわかってきたように思います。あの頃の自分に、そう教えてあげたいです。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2021年9月6日号

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小島慶子

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小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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