東京都「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」から(AERA2022年11月28日号より)
東京都「地震に関する地域危険度測定調査(第9回)」から(AERA2022年11月28日号より)

「隅田川や荒川沿いの下町に総合危険度5が多い地域が集まっているのは、地盤が緩くて倒壊する建物が多いのと、古い木造の建物が密集しているのが大きな原因です」

 他にも、「5」の地域は新宿区若葉3丁目(49位)、杉並区高円寺北3丁目(54位)、中野区若宮1丁目(71位)など、東京区部西側の「山の手エリア」にも広がっている。

 この点を、中林名誉教授はこう述べる。

「細街路(さいがいろ)と呼ばれる幅4メートル未満の道路が多く、古い木造住宅が密集し、特に火災の危険が高くなっています。細街路は消防車などの緊急車両が入りにくく、塀などが倒壊すると避難の妨げになる恐れがあります」

災害に強い街づくり

 一方、相対的に最も安全とされた地域は12カ所。昭島市もくせいの杜2丁目、調布市野水2丁目などは関東ローム層で一般に揺れにくく、密集した市街地ではなく新しい住宅が多いのが特徴だという。

 もちろん、行政も手をこまねいていたわけではない。

 荒川区住まい街づくり課の担当者は言う。

「総合危険度が高い地域を中心に、火よけ地をつくり建物の密集度を少しでも下げるなど対策を取っています」

 都は2012年、市街地の延焼の危険性がほぼなくなるとされる不燃領域率70%を目標に掲げた「不燃化10年プロジェクト」を開始した。中でも重点整備が必要な52地区を「不燃化特区」に指定し、老朽建物の撤去費の助成や建て替えた建物の固定資産税の減免など、災害に強い街づくりを進めてきた。

 その結果、今回、都全体の傾向として前回(18年2月)と比べ、建物倒壊危険量は約2割、火災危険量は約5割減少するなど、ほとんどの地域で危険性は下がっている。

 都防災都市づくり課の担当者は言う。

「木造の建物被害率の変更や耐震性の高い建物への建て替えで、建物倒壊危険量を減らしていくなど防災都市づくりは着実に進んでいます」

 だが、東京が安全になったわけではない。死者数はなお、95年の阪神・淡路大震災(死者6434人)に匹敵する。(編集部・野村昌二)

AERA 2022年11月28日号より抜粋

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