「僕は最初『この辺のことを言えばいいのかな』となんとなく当たりをつけていたんですよ。そうしたら、周りにいたクラスメートが、親友が亡くなったときの話や、母親と衝突したときの話とか……とにかくどんどん自分をさらけ出していって、僕の番がきたときは、用意したようなエピソードではなく、おなかの中にある傷をさらけ出さなきゃダメだと思った。それで泣きじゃくりながら、本当に自分が人に言えなかったトラウマを吐き出しました。涙が止まらなくなって、喉も詰まって、叫んで……。先生から、『ほら今だ! おなかの底から声を出して!』って指示されて、我に返ったんです」

 授業が終わった後、クラスメート全員が、なんとも言えない信頼感で結ばれていた。人前で自分の弱さをさらけ出していくことが演劇なのかもしれない。そんなことを思いながら、自分が演劇の魅力に取り憑かれていくのを感じていた。

 演劇学校の発表会の前になると、リハーサルルームを借りて、自力で大道具や小道具を用意した。自分たちで台本を書いて、自分たちで演出・出演する。前日には、「お客さんが一人でも来てくれたらありがたい。ベストを尽くそう」と励まし合った。

 そして2年後には、オフブロードウェーのオーディションを受けていた。

「最初に『どんなものだろう?』ってあやふやだった演劇の輪郭が、だんだん鮮明に見えてくるのが面白かったです。日本にいるときは、どうしたら舞台に立てるのか見当もつかなかったのが、『今俺、オフブロードウェーのオーディション受けてるんだ』って思うと、自分の足で、一歩一歩前に進めている実感があって」

 演劇学校を卒業したタイミングがコロナ禍で、しばらく帰国はかなわなかった。2021年4月、ようやく日本の土を踏めたとき、圭人さんは、Hey!Say!JUMPからの脱退を発表した。

 同年秋には、舞台「Le Fils 息子」に主演し、今年は、内野聖陽さんと共演した「M.バタフライ」、「盗まれた雷撃 パーシー・ジャクソン ミュージカル」など、順調に舞台人としてのキャリアを積み、12月には、舞台「4000マイルズ~旅立ちの時~」で高畑淳子さんと共演する。

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