■ショックは緩和できる
つまり、コロナ保険にまで加入すると、保障が重複してしまう可能性が高いというわけだ。
ある保険会社のプレスリリースには「新型コロナで療養中の食費や日用品代は患者負担で、収入減も想定される」といった趣旨の指摘が記されていた。しかし、新型コロナに感染せずとも、食費や日用品代はもともと本人負担。収入減に対しては、公の支援制度も設けられている。
「ある意味、コロナ保険はがん診断給付金(一時金)と似たような存在かもしれません。通常のがん治療には健康保険が適用され、先進医療を用いた場合も特約で保障が受けられるがん保険が主流です。一時金が出ないと治療に支障を来すわけではなく、がん宣告による精神的なショックを、金銭で緩和するという色彩が濃いのです」(同)
先述したように、コロナに感染した場合の治療は公費で賄われるのが基本だ。
がん診断給付金以上に保険金の必要性は乏しい。精神的なショックを和らげること以外に、加入する理由が見当たらないということだ。
足元で感染者数がケタ違いに増えているのは確かで、8月中旬には1日の国内新規感染者数が2万人を突破した。とはいえ、日本の人口は1億2500万人超だから、確率的にはそこまで高いとも言いがたい。
不安にあおられて保障を重複させるよりも、感染予防対策を徹底することのほうが得策ではないだろうか。(金融ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2021年9月6日号