心理学についてわかりやすく説いた『マンガでわかる! すぐに使えるNLP』の著者で、公立学校での教員経験もある家族・教育カウンセラーの藤川とも子さんは「このアンケート結果では保護者の就労形態などのバックグラウンドがわからないので、これが全てとは言い切れない」と話した上で、親たちにストレスがたまっている状況について、「まずは趣味など、親自身が自分を解放することを始めてみてほしい」と提案する。
「子育てに対する不安感は、経験値がない1人目のお子さんのほうが強いでしょう。繋がりが薄くなった園や学校とのコミュニケーションについては保護者の方から交流を持ちかけてみるのも手では。オンライン会議システムを使ってのクラス懇談を担任の先生に持ちかけてみるのもいいと思います」
■あえてPTAに立候補
気をつけたいのは園や学校にやってくれと押しつけるのではなく、一緒にやりましょうと持ちかける姿勢だと言う。
「保護者同士で話すときも、『私も手伝うので』と言ってやる方がスムーズに進むと思います。相手を変えることは難しいので、自分ができることからまず提案し、話を進めていくのが大事です」
また、保育園の場合は保護者同士の交流掲示板を作るのも手だと勧める。
「困っていることなどを気軽に書ける掲示板があれば、そこから交流に繋がることもあるはずです」
実際に、交流の機会を求めて「あえてPTA役員に立候補した」という保護者もいる。昨春、コロナ禍で中学生活が始まった静岡県に住む中学2年の母親(41)は、ママ友を作る目的で今年度の役員に立候補した。中学受験をしたため、保護者の知り合いがいないまま1年が過ぎたからだ。
「もともと役員をやるつもりはありませんでした。でもあまりにも保護者同士のつながりが希薄で。懇談会も中止になり、1年経っても誰とも連絡先を交換できていない状況でした」
思春期の中学生は、小学生の頃のように、学校の様子をあまり親に話さなくなる。それだけに保護者間のコミュニケーションの必要性をより感じたという。
「誰も知り合いがいない中、平日に1人で体育祭や音楽会を見に行きました。一生懸命な姿に感動しても、誰とも共有できなくて。今年度は役員仲間と共有できたので、感動もひとしおでした」
終わりの見えないコロナ禍、新たな交流の道を作っていくことが、保護者の肩の荷を下ろすことに繋がりそうだ。(フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)
※AERA 2021年9月6日号より抜粋