「(偽物として使用する)過去のホームラン動画は、アメリカのテレビ局など権利関係に厳しいところを避け、おそらくプライベートで撮影している人の動画を使っています。放送局の動画だと嘘がすぐにばれますが、素人の動画であれば、足がつきにくく、通報されるリスクが低い。また、プロの放送局や配信会社の動画と比べて、投稿者の動画であれば、相手から訴えられる可能性も低い。そのうえ一般人の動画であれば、アナウンスやスコアなどの情報も何もないので、何号なのか分からないまま見続けさせることができます」

 今回、当サイトは投稿者に取材を申し込もうとしたが、連絡先は明記されていなかった。

 前出の金融業男性(27)は、野球のYouTube動画を定期的に見る習慣があるというが、とくに大谷の場合は見る頻度が多いという。

「日本のプロ野球と比べると、大リーグの試合は地上波で流れない。流れても時差があるので、日本時間の深夜からお昼にかけてのことが多い。リアルタイムで見られないから、YouTubeで大谷のホームラン動画を見たくなる。あれだけ投げて、あれだけ打って。非現実的なプレーを見せつけられているから、野球好きからすると『打ってないかな』と楽しみにしている人も多いと思う」

 大谷の動画のどういった点に注目し、惹き付けられているのか。この男性は、文字だけでなく、あえて動画でみる理由をこう語る。

「もちろん打球の速さやスイングの力強さといったプレーも見ていますが、動画を見ることで、言葉は分からないながらも、アメリカの解説者が興奮している様子や、熱のこもりようが伝わってくる。打った後、会場でファンの子供たちがはしゃいでいるのを見ると、大谷って本当にすごいんだなというのを実感する。声のトーンや会場の雰囲気は、文字ではなく動画で見ないと味わえない。大谷のプレーはワクワクさせてくれますし、エンタテインメント。彼の"野球ショー"を見たくなるんです」

 大谷のフェイク動画は、同一アカウントの43号の動画だけで、243万回再生や193万回再生などのヒットを記録している。人気YouTuberの動画や人気音楽アーティストのミュージックビデオに匹敵する再生回数だ。再生回数だけで見れば相当な収益を得ていそうだが、前出の小木曽氏はこう指摘する。

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