「YouTubeでは、信用度や人気度に応じて、1再生あたりの単価が上乗せされていきます。(今回の投稿主は)おそらく最低ランクのアカウントなので、単価は1再生あたり0.05円か、よくても0.1円。200万回再生されても、10万~20万円程度のはずです。今回の手法は、法的には違法にあたらないと思いますが、YouTubeの規約には抵触するはずです。場合によっては、フェイク動画で得た収益は全て没収されます」
こうしたフェイク動画を投稿するアカウントは、同時に複数のアカウントを持っている可能性も十分考えられるという。
「各所で細かな稼ぎをいっぱい集めて、それで生活しているのかもしれません。この手の動画は通報されるので、1年2年と続けられるようなものではないですし、"捨てアカ"に近いと思います。ある程度稼げさえすれば、それでいいのでしょう。世の中の注目が別のものに移れば、そちらに乗り換える」(同)
さらに小木曽氏は、稼ぎよりも罪深い点を指摘する。
「罪深さでいえば、稼ぎよりも、数百万人から時間泥棒をしていることのほうかもしれませんね。再生回数が200万回で2分の動画なら、200万人×2分で400万分の無駄な時間を作っている。1つのフェイク動画で、400万分の時間が日本から失われているわけですから、相当なロスです。それだけの時間を奪ってまで、自分のお金を稼いでいる、その部分での悪質さは相当なものがありますね」
昨今はファスト映画をはじめ、悪質な動画が次々と投稿されている。
「ファスト映画は実際の内容、つまりは本当のことを見せてしまっていますが、今回のフェイク動画は中身が乏しく、クリックさせるだけの手法。系譜としては『サムネ詐欺』と同じで、『真実お話します』『(有名人の)兄です』などと言って実際は嘘である動画などとも似ています。この系譜では、初期には『おもしろ大事件が起きました』と謳って面白い事件が起きないといったように、まだかわいげがありましたが、だんだんと発展して、迷惑度は増している。再生さえされれば中身なんてどうでもいいというスタンスは、迷惑系YouTubeと一緒です」(同)