菅義偉首相 (c)朝日新聞社
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 菅義偉首相は9月3日午前、自民党の総裁選(29日投開票)に出馬しないことを表明した。就任から1年での辞任劇をどうみるか、政治ジャーナリストの角谷浩一さんに聞いた。

【写真】二階幹事長が推すポスト菅の大穴はこの人

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 菅首相は2日、自民党本部で二階俊博幹事長と会談して「総裁選に立候補する意向を伝えた」はずだったのに、翌日の3日になったら「立候補しない」と表明しました。「これはどういうこと?」と、国民の目から見るととてもわかりにくいですよね。

 急転直下そうなったのは、まずは党内からいろいろな突き上げがあったから。そもそも、この期に及んで幹事長を変えるとはどういうことだ、という批判の声も上がっていた。衆議院選挙も近いのに、体制を変えることになりますから。

 それに加え、内閣支持率が低迷しているだけでなく、自民党が独自に実施した衆院選挙区調査で、非常に厳しい情勢を突きつけられてもいたようです。「総理、これで戦えますか」ということですね。

 幹事長人事ひとつとっても、二階幹事長の後任のなり手がいない。岸田文雄前政調会長には「打診されても絶対に受けない」と断られてしまった。幹事長になりたい人はいっぱいいるけれど、選挙の責任を取らなきゃいけないわけですから、誰もやりきれないし、やりたくないわけですね。受ける人がいなくなってしまったというところから、菅氏にとっては事態がおかしくなっていった。

 「人事の菅」と言われたけれど、人事もできなくなり、結局、策を弄してもダメだ、という雰囲気になっていったのでしょう。

 小泉進次郎環境相は、この4日間官邸に入って菅首相にいろいろと言ってきたそうですが、退任するという情報が流れていた3日午前11時過ぎにも「菅氏を支える」と間抜けなぶら下がりをしてました。全然知らされていなかったようですね。

 菅首相は、このところ、総裁選を先送りにして衆院選をやりたいなど、悪あがきのように気持ちが揺らいでいて、党内を混乱させました。菅内閣は、安倍晋三前首相が体調を崩して退陣し、安倍内閣の残りの期間を引き継いだ「暫定内閣」だった。だからこそ、総裁選で勝って、本当の意味での菅内閣が作りたかった。組閣をして、自前の閣僚名簿を作りたかったんでしょう。

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菅首相が行使できたはずの「3つのカード」