9月5日に閉幕する東京パラリンピックで、日本選手団は2016年リオデジャネイロ大会でゼロだった金メダルを13個獲得した。そのうち6個は静岡県出身の選手が占めた。理由は何かあるのだろうか。
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金メダルに輝いた静岡県出身の選手は、自転車ロード2冠で日本人最年長の金メダリストとなった杉浦佳子(50)=掛川市出身=、ボッチャ個人の杉村英孝(39)=伊東市=、競泳男子100メートル自由形で3大会ぶりに頂点に立った鈴木孝幸(34)=浜松市出身=、陸上(車いす)2冠の佐藤友祈(31)=藤枝市出身=の4人だ。
ただ、現在も静岡県に住み、練習拠点としているのは杉村だけ。杉浦は東京都在住で、今年3月から福岡市に拠点を置くロードレースチーム「VC福岡」に所属している。鈴木はイギリス、佐藤は岡山県でトレーニングを積んできた。静岡県の練習環境が金メダルに直接結びついているわけではない。
では、ほかに理由があるのか。
「正直、なぜだかわからないんです」
静岡県スポーツ振興課課長の高松央(ひさし)さんは首をかしげる。
「パラリンピックを目指す選手にも、五輪と同じ年間最大120万円の助成を行って支援していますが、特別な施設があるわけでもなく、他の県に比べて恵まれた環境とは言えません。選手たちがご自分で競技環境を開拓して、ずっと努力を続けてきた成果ではないでしょうか」
障害者専用のスポーツ施設は、1974年に大阪市で初めて作られた。現在は都内2カ所のほか、横浜市、千葉市、仙台市など各地にあるが、静岡県内にはない。静岡県沼津市に住む車いすラグビー銅メダリストの若山英史(36)は、毎週のように横浜市の障害者スポーツ文化センター横浜ラポールに通っている。
静岡県出身で、長年パラスポーツを撮り続けてきたカメラマンの男性はこう推測する。
「静岡はスポーツに限らず、進学や就職で関東や関西に出ていく人が多い。一番いい競技環境を求めて県外に飛び出していくのはそうした県民性もあるのでは」
陸上の佐藤は12年ロンドン・パラリンピックを見て静岡県内で競技を始めたが、2年後に岡山県に拠点を移してパラリンピック3大会連続出場の松永仁志さん(48)に師事した。ただ、他県出身者も佐藤のように拠点を移す選手は少なくない。