裾野をさらに広げる取り組みも始まっている。静岡県は昨年9月、病気や事故で足を失った子どもたちがスポーツ義足を履いてランニングに挑戦するイベントを主催した。10人が参加。将来的には自分で日常用からスポーツ用の義足に付け替えて走れるようにと、交換の練習もした。
講師を務めた義足の陸上選手4人のうち、東京パラリンピック代表の山本篤(39)ら3人が静岡県出身。競技用義足を提供した義足エンジニアで、Xiborg代表取締役の遠藤謙さん(43)も静岡県出身だ。参加者の一人が4日後の運動会で走るため、遠藤さんは急きょ義足を貸し出し、山本がテレビ電話で走り方を教えたという。
遠藤さんはこう話す。
「足を切断した子どもたちにも走る楽しさを体感してもらいたいし、日常的に走れる環境をつくりたい」
ただ、こうした義足は高額でなかなか手に入らない。山本はこう語る。
「日常用の義足は保険か障害者手帳で助成を受けられますが、競技用の義足は数10万円か100万円ほどと高いので、義足で走っている子どもは少ない。でも、義務教育課程で体育がある。子どもたちに競技用義足を提供できる仕組みづくりを自治体などに働きかけていきたい」
東京パラリンピックでの静岡県出身者の活躍で、県内でのパラスポーツへの関心はより高まっているようだ。自転車の杉浦は9月3日、2個目の金メダルを取った後のインタビューで言った。
「パラスポーツをやりたいという方から(静岡県)障害者スポーツ協会に連絡がきていると聞いて、すごくうれしいです。自分を見てそう思ってくれる方がいたのであれば、自分は一番いい仕事ができたかな」
(編集部・深澤友紀)
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