木村:ありがとうございます。たとえば、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と定める憲法24条を同性婚禁止規定だと言う人がいます。しかし、ほとんどの法律家は、憲法24条は、同性婚を禁止していないと理解しています。この条文は、「婚姻では男性のみならず、女性の意思も尊重しなければならない」「当事者が合意すれば、戸主や親の同意がなくても結婚できる」と定めるものです。
林:なるほど。
木村:しかし、憲法は同性婚を禁止していると誤解されたり、国会議員がサボるための道具に使われたりしている。私は「それは違うんですよ」と、法律論をきちんと伝える仕事をしています。
林:毎年、終戦記念日のころになると、憲法にまつわる議論、とくに憲法改正の是非などが盛り上がりますよね。今年はコロナやオリンピックの影響で、例年よりは話題になりませんでしたけど。憲法を改正すべきと言う人は「アメリカから押しつけられた憲法にいまだにしがみついていて、屈辱の歴史だ」と言うし、護憲派は「いまの憲法があるから、日本の平和が守られてきた」と言いますよね。国民にアンケートをとっても、媒体によって結果がまちまちです。
木村:それは、聞き方によるものだと思います。「憲法は改正すべきか」という、非常に漠たる聞き方をすれば、「どこか一つぐらいは」と答えたくなるでしょう。「自衛隊が海外で爆弾を落とせるようにしたいですか?」と聞けば、たぶん「ノー」と答える人が多いんじゃないかと思いますね。
林:「改正すべきところは、改正してもいいんじゃないかな」という人が、少しずつ増えているように私は思うんですが……。
木村:じつは、昔からそう言われているんですよ。これ、トートロジー(同義語反復)で、すでに「改正すべき」という結論を先に言っているので、「改正すべきところは、改正すべき」というのは、ある意味あたり前なんですね。
林:ああ、なるほど。ただ一方で「一字一句変えてはいけない」という方も、いっぱいいらっしゃるわけですよね。