林:でも、じつは私、「多様性」という言葉が適切に使われていないな、と思うこともあって。この言葉を使っていればすべてよし、というか、無批判に乱用している場面もある気がしています。「ちゃんと多様性、意識しているよ」というアリバイ作り的な、ああいう感じが、ちょっと私はどうも……。
木村:形だけで終わってしまうのではないかということですよね。たとえば今年、五輪開催にあわせようと、LGBT差別解消に向けた法整備が試みられましたが、結局、法案の国会提出は見送られた、ということがありました。
林:「女性活躍」もずいぶん前からキーワードのひとつになっていますが、先生は2人のお子さんのお父さんでいらっしゃるんですよね。若い世代は、共働き世帯が多いのもあって、男性が家事や育児によく参加していると聞きます。
木村:はい、そういう傾向はありますね。
林:心からうらやましいです。本当に少しでもいいから、夫に家事や育児に参加してほしかった、と思いますよ。私たちの年代の配偶者は、家事や育児をまったくやってくれない人がたくさんいますからね。むしろ、男性は家事や育児をすべきじゃない、と思っている人も一定数いるくらいじゃないでしょうか。でも、いまさら70代の夫に家事分担を求めても無理なので、もうとっくに諦めています。
木村:婚姻に関する憲法24条は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めています。日本国憲法ができたとき、この「夫婦が同等の権利を有する」、つまり家庭内の男女平等を定めたこの条文を武器として、妻が夫やしゅうとに対抗することがあった、と昔の文献で読んだことがあります。
林:そうですか。憲法に保障されている「夫婦の平等」が、私の家には当てはまらない。わが家は憲法違反ですね(笑)。
木村:ところで、私もこの夏、著作を読ませていただきました。