木村草太さん(左)と林真理子さん (撮影/大野洋介)
木村草太さん(左)と林真理子さん (撮影/大野洋介)
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木村草太 (撮影/大野洋介)
木村草太 (撮影/大野洋介)

 子どものために書かれた入門書『ほとんど憲法 小学生からの憲法入門 上・下』など、多くの著書を持つ憲法学者・木村草太さん。作家・林真理子さんが多様性や女性活躍など、気になることを伺いました。

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護憲派の主張の背景に「第2次世界大戦の遺恨と警戒心」 憲法学者・木村草太が解説】より続く

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林:パラリンピックが開催されましたね。昨今、「多様性」というキーワードが話題になっています。以前、差別と偏見の違いについてお書きになっていましたが、なるほど、と思いました。

木村:差別は感情の問題で、偏見は事実認識の問題というのが私の理解でして、たとえば「女性は文章が書けない」というのは事実認識の誤りなので、偏見だと思うんです。一方、「女性が文章を書くのは気に食わない」というのは、事実認識ではなくて感情的なものなので、これは狭い意味の差別である、というのが私の認識です。単に事実を間違えているだけなら、事実を摘示するだけで偏見は解消できるはずなんですね。

林:そうですね。

木村:一方、差別は感情の問題なので、事実を摘示することで解消できる話ではない。「女に文章を書いてほしくない」という人に対して、「いや、女の人も素晴らしい文章が書けますよ」と言ったところで、「それが気に食わないんだ」となるわけですから。

林:なるほど。

木村:もう少し言えば、「多様性の尊重」というのは「差別の禁止」になるわけです。それでは差別を禁止するためには、どうすればいいか。人はどうしてもいろんな感情を持ってしまうので、「差別感情を持っても、それを公共の場に持ち込むな」というのが正しいやり方だろうと思います。

林:家の中でテレビを見ながら差別的なことを言ってる人を、どうにかするのは難しいですもんね。

木村:そうですね。ただし、たとえば国会議員という権力者を選ぶ選挙は公共的な場ですから、「そういう場に差別感情を持ち込まないでくださいよ」ということは言わなきゃいけないと思います。

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