また、同記者によれば、ランドンくんの家族は、ダルビッシュがいつかテネシー州を訪れた時には、自宅に招き、このお礼として食事を振る舞いたいと語ったそうだ。そして、「彼らにとって、7月のアトランタ旅行は今もショックであるというが、その事がきっかけで今回の出来事につながった。ランドンくんはこの出来事を決して忘れないでしょう」と締めた。
この心温まるエピソードに対し、同記者には、「素晴らしい話を共有してくれてありがとう」、「なんて最高の選手なんだ」、「涙が出てきた」、「野球以上に大切なものを与えてくれてた」など、ダルビッシュの行為を称賛する数多くの声が寄せられた。
また、中には、ランドンくんがダルビッシュからサインをもらった日に、同じくサインをもらった別の子の親から「息子にとって初めての試合で、ダルビッシュ選手は息子の夢を叶えてくれた最高の人です」という話もハイルブラン記者の元に届いた。
メジャーリーグでは、特に子供たちに対して大きな夢を与えることが選手たちの使命の一つともされている。そしてそれは球場でのプレーに限った話だけではない。各球団はシーズン中やオフに、人気選手が小学校や病院を訪問するイベントを社会貢献プログラムとして頻繁に企画している。エンゼルスの大谷翔平も同僚とともに小児病院を訪問し、現地の子供たちと交流したことがあるのは有名な話だ。しかし、今回は選手が個人として行なったということで、このように大きな話題となった。
ダルビッシュ本人は、自身のブログやSNSではこのことについて一切語っていない。ダルビッシュにとっては、きっと当たり前のことをしただけなのかもしれない。しかし、もし、地元記者がこの話を共有してくれなければ、私たちはきっと知る事は出来なかっただろう。
なぜアメリカでダルビッシュがこれだけ多くの野球ファンから認められているのか。それはもちろん、メジャー生活10年の中でトップクラスの成績を残し続けていることもあるが、このようにファンを大切にする姿に彼らは心を打たれているからだ。今回の出来事は、まさに、ダルビッシュの人柄がうかがえるエピソードだったといえよう。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)