6月23日には、愛媛県愛南町の深浦郵便局の30代の男性局長が、抜き打ちの調査当日に局を抜け出して死亡し、5~6月に計2億4千万円を着服していたことがのちに判明した。

 さらに6月29日には、本県天草市の二江郵便局の40代の元局長の男が、日本郵便株式会社法違反(収賄)容疑で熊本県警に逮捕された。かんぽ生命の顧客情報を保険代理店側に流した見返りに、現金を受け取っていたとされている。

 大阪府守口市では、実際には使っていない会議室の費用を請求して着服する行為に複数の局長が関与していた疑いが浮上。日本郵便は詳細を公表していないが、すでに解雇や減給などの懲戒処分が出ているという。

 そして末武氏のメッセージ発信から1カ月もたたないうちに、今度は福岡県内の統括局長2人の解任が社内でひっそりと発表されていた。取材を進めると、2人が経費の不正利用を理由に懲戒戒告処分を受けていたことが明らかになった。

 統括局長は100前後の郵便局を束ねる局長幹部で、地区内の人事や評価に強い影響力を持つ。同じエリアの地区郵便局長会で会長となった郵便局長が、そのまま会社で統括局長に就くケースがほとんどだ。

 日本郵便などの説明によると、2人の統括局長は2019年春ごろ、実際には行っていない会合を名目に、ホテルでそれぞれ数十万円分の飲食チケットを購入し、その後に別の会合に流用していた。さらに、この不正な経費処理に関わったホテル従業員が、福岡県内の郵便局の局長に採用されていたというから、驚くしかない。いったいどんな理由や根拠で局長になれたのだろうか。

◆局長会はアンタッチャブル

 相次ぐ局長不祥事の発生は、日本郵便、ひいては親会社日本郵政による企業統治が機能していないことを象徴している。その最大の理由は、日本郵便の経営陣や各支社が局長会という組織に怯え、不都合な事実にも目をつぶり、「アンタッチャブルな存在」として跋扈されるのを許してきたからだ。

次のページ
ガバナンス崩壊した郵政