最終的にはその姿勢が球団の上層部との軋轢を生み、結果を残しながらも退任することとなったが、それくらいのぶれない姿勢があったからこそチームを再建することができたとも言えるだろう。ただ落合監督の就任前のチーム成績をよく見てみると、ペナントレースの順位は5位、3位、2位と推移しており、決して長い低迷期に入っていたわけではない。ある程度力のあるチームを更に伸ばしたという見方もできる。

 近年、指導者経験がない監督で成功した例としてはDeNAのラミレス前監督も該当するだろう。BCリーグの群馬では選手兼打撃コーチとしての経験はあったものの、NPB球団での指導者として実績はないまま2016年に監督に就任。チームは10年連続Bクラスと完全な低迷期だったが、5年間で3度Aクラスに入り、2017年にはリーグ3位ながらクライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズ進出も果たした。監督通算336勝は球団歴代3位、Aクラス3回は球団歴代2位タイの記録である。采配についてはメジャーでのプレー経験も影響してかデータを重視したもので、それが球団の方針と上手くマッチしていた部分はあるだろう。一方で選手起用については頑固な面があり、それが批判されたこともあったが、自分の方針を曲げない強さは落合監督と通じる部分とも言えそうだ。

 一方で低迷するチームの再建を実績のある監督に託すケースもある。1999年、当時6年連続Bクラスに低迷していた阪神ヤクルトで黄金時代を築いた野村克也監督を招聘。長打力不足の中で機動力のある選手を揃えた“F1セブン”や、新庄剛志の投手挑戦などあらゆる手を打ったものの結果を残せずに3年連続最下位に終わっている。その後に就任した星野仙一監督では見事に優勝を果たしたが、この時は大幅な血の入れ替えなど大型補強が奏功しており、球団としてのバックアップ体制の強化が大きかったと言えそうだ。

 こうして見てみると、低迷するチームを立て直す指揮官として重要なのはある意味頑固とも言える自分のやり方を貫く強さではないだろうか。そういう意味では稲葉監督は今回の東京オリンピックであらゆる批判がありながらも、方針を曲げることなく結果を出したという点ではその素養があるとも考えられる。

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