美波:あれから50年たっているのに、環境汚染はぜんぜんなくなっていません。地球は悲鳴を上げるどころか、壊れていっていると思います。出る杭は打たれても、どんどん声を上げていかなくちゃいけないなって、私も実感しています。

林:日本で撮影したんですよね。

美波:じつは、セルビアとモンテネグロで撮影したんです。

林:えっ! 日本じゃないんですか?

美波:ハリウッド映画といってもこれはインディペンデント(自主製作)なので、お金のことや、いろんな兼ね合いがあるんだと思います。じつはセルビアは、ヨーロッパでいちばん安く撮影ができる国なんです。だから、毎年たくさんの映画が、セルビアで撮影されているんですよ。

林:へえ~、知らなかった。

美波:その分、セルビアの技術はすごく上がっていて、今回もほぼセルビア人のスタッフさんだったんです。メイクさんから衣装にいたるまですべて。

林:あの時代の日本の洋服、セルビアの人がつくったんですか。

美波:そうなんですよ。すべて手作りなんです。あの技術はすごいと思いました。

林:エキストラの日本人たちは、ヨーロッパにいる人たちですか。

美波:東ヨーロッパ在住の日本人の方が多かったですね。あとは日本から自費でいらっしゃった方が、何人か参加されていました。エキストラさんの熱意にも感動しましたよ。私、ずっと日本に帰れなくて、日本食が食べられなくてつらかったんですけど、エキストラの女性が炊飯器を持ってきて、お米を炊いてくれたんです。涙でお米がしょっぱかったです(笑)。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

美波(みなみ)/1986年、東京都生まれ。母が日本人、父がフランス人。「バトル・ロワイアル」で映画デビュー以降、舞台「エレンディラ」「ザ・キャラクター」、映画「乱暴と待機」など、舞台、映画、ドラマ、CMで活躍。2014年、文化庁「新進芸術家海外研修制度研修員」に選出され渡仏、ジャック・ルコック国際演劇学校に1年在籍。近年の出演作に映画「Vision」など。9月23日公開の映画「MINAMATA」では、ジョニー・デップ演じる写真家ユージン・スミスの相手役アイリーンを好演している。

週刊朝日  2021年9月24日号より抜粋

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