官僚への当たりも強い。最近も「週刊文春」が、河野氏がオンライン会議で資源エネルギー庁の幹部職員に対し「日本語わかる奴出せよ」などと高圧的に迫った一件を「パワハラの疑い」と報じた。ある経産官僚が語る。
「河野さんは強引で人の話を聞かずにああいう物言いをするから嫌われている。官僚の言うことを何でも聞く必要はないが、聞く耳を持たないと、安倍前首相や菅首相のように周りを自分のブレーンで固め、もっと官邸主導が強まるのではないか」
苛烈な性格ゆえに官僚から恐れられる一方、“激しさ”が突破力となり、改革につながることもある。飯塚盛康全経済産業労働組合中央執行委員は言う。
「国家公務員の残業は予算で限度額が決まっているので、100時間残業しても30時間分しか出ないなんてことは当たり前でした。それが、河野さんが『公務員の働き方を変えよう』と旗を振ってくれたおかげで無駄な残業が減り、人事院も残業未払いの人の名前を調査して、省庁に指導してくれるようになりました」
派閥を嫌う河野氏だが、仲間がいないわけではない。秋本真利衆院議員は、市議時代に河野氏からエネルギー政策の知識の深さを評価され、国会議員になるよう助言された。秋本氏は言う。
「12年に初めて衆院選に出た時は、選挙区に10回以上応援に来てくれました。面倒見が良く懐が深い。といっても選挙資金を配るとかではなく、後輩議員を友人として助ける人。当選回数のような国会議員の序列も気にしない人です」
今回の総裁選では、河野氏が「脱原発を封印した」という批判が出ている。これに対して、秋本氏はこう反論する。
「河野さんと私は10年以上エネルギー問題について議論していますが、『即時脱原発』という話は一度も聞いていない。一方で、使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルの見直しは明言しています。新増設を認めなければ原発はいずれなくなっていく。これは、河野さんのこれまでの主張と何も変わっていません」
前出の山本知事は、群馬県内の自民党議員や経済界の有力者に河野支持を訴えている。その理由について、こう話す。
「河野太郎は『変わった人』と思われていたけど、それが変わった。今という時代が河野太郎を求めているのだと思う」
(本誌・西岡千史、亀井洋志)
※週刊朝日 2021年10月1日号に加筆