洗浄便座の使いすぎにも注意したい。排泄障害の予防や治療及び適切なケアマネジメントを推進する日本コンチネンス協会理事の近石昌子さんが説明する。

「洗浄便座の水勢を強くして洗い続けたり、浣腸代わりに使用したりしていると、便失禁を誘発することも。水勢は弱めにしてほしい」

 多くの人が人知れず悩む便失禁。前出の男性のようにショックを受ける人は多く、社会生活が満足に送れなくなる人もいる。ノイローゼ状態に陥ってから受診する人も多いという。

「いつ漏らすかわからない恐怖から外にも出られず、恥ずかしくて家族にも症状を打ち明けられない。ばれないようにこっそりと自分のパンツを洗っている人も少なくない。便失禁は生活の質を著しく下げ、人の尊厳にかかわる病気なのです」(前田教授)

 今は薬局などに行けば、便・尿漏れ対策グッズがいくつも市販されている。

「買いづらいという理由で、下着にティッシュペーパーを挟んでいる男性がよくいますが、しっかりと便に対応したパッドを使ってほしい」

 そのほか、肛門にふたをするアナルプラグという器具もある。肛門に挿入すると先端が膨らみ、肛門に栓をする。常に装着するものではなく、たとえば結婚式やプールに行くときなど、どうしても便漏れを避けたいここ一番で使用するもの。医者の処方などは必要なく、市販されているので検討するのも一考だ。

 ただ、これらは一時的な対策だ。根本的な対処法はあるのか。前田教授は「便失禁は改善できる病気」と断言する。まずは食生活の見直しだ。

「便漏れは下痢で起きることが多いため、いもやゴボウといった繊維分を多く含む、便を硬くする食事を心がけてほしい」

 一方で、カフェインや、柑橘類、香辛料の多い食事、アルコールといった下痢になりやすい飲食は避けよう。近石さんは便の形状や硬さに注意を払ってほしいと話す。

「ブリストル便性スケールという指標があります。便失禁に悩む方は、3の表面にひび割れのある硬めの便や、4のバナナ状で練り歯磨き粉のような便を目指すのが目安でしょう」

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