高校に通わず16歳で東京大学理科一類に合格し、韓国から来日。東大大学院の博士課程を修了し、医療用AIの研究に没頭してきたAI研究者が、カリスさん(28歳)だ。「日曜日の初耳学」で林修さんから会いたいと指名されるなど、メディアでも注目を集めている。そんな彼は今、YouTubeでも発信を続けている。いったい何がモチベーションなのか。壮絶な生い立ちに迫った。
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「“Change of Shape” やあ、カリスだ」
彼のYouTube動画はいつもこの一言から始まる。「他の人がぜえぜえ言いながら歩いている中、僕は君を新幹線に乗せてあげる」「今日で君も達成者の仲間入りだ」……自信たっぷりの低い声。「自分を変えたい」と悩む若者から中高年まで約7万人の視聴者に向け、英語の勉強法について発信する。
アカウント名に「東大AI博士」と冠するカリスさん(本名:韓昌熙さん)は、東大大学院時代に医療AIの研究に没頭し、ケンブリッジ大など海外トップクラスの大学から4年連続で招待された経歴の持ち主だ。最近は新型コロナウイルス感染症の画像解析研究にも論文が複数回引用されるなど、研究者として高い実績がある。
YouTube動画では自らを「成功者」と称するカリスさん。だがその背景には、壮絶な過去があった。
■アルコールにおぼれる父から夜な夜な暴力
韓国第2の都市・釜山出身。アルコールにおぼれる父から、夜な夜なわけもなく暴力を振るわれていた。もっとも強く当たっていたのは母に対してだったが、カリスさんとその姉も幼いころから被害を受けていた。
「母はいつになったらこの父親と離婚してくれるのだろう、と願う日々でした。でも母は、父親はダメな人だから自分が助けなければと思っていたようです」(カリスさん、以下同)
学校生活もうまくいっていなかった。内気で話すことが苦手で、小中学生時代は罵詈雑言を浴びせられたり、バケツいっぱいの水をかけられたり、椅子を投げられたりといったいじめに遭っていた。毎日逃避するかのようにゲームをしたり、本を読んだりしていた。特に好きだったのは世界の偉人伝。みな苦しんだ過去があるが、どん底から這い上がる。英雄たちに自分を重ね、「いつかこうなりたい」と切望していたという。